等価形態と使用価値

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等価形態と使用価値

等価形態を考察する際我々の注意に上る第一の特色は、使用価値がその反対物たる価値の現象形態になるという事実である。

資本論第一巻第1篇第一章第三節一(3)等価形態

等価形態は、リンネルを持っている人が、そのリンネルを上衣と交換しようとするときの「上衣」である。

上衣と交換しようとする人は、「上衣」を使用することにその価値を見出している。

つまり、「上衣」の価値は「使用価値」としてその価値が認められている。

一方、相対的価値形態である反対物のリンネルの価値は、必要な上衣と交換するための価値(交換価値)として認められている。

斯くの如く目方の尺度としての鉄体は、棒砂糖に対して単に重さのみを代表するのであるが、それと同様に上記の価値表章に於いても、上衣体はリンネルに対して単に価値のみを代表するのである。

資本論第一巻第1篇第一章第三節一(3)等価形態

ここにいう「単に価値のみ」とは、「使用価値」と理解する。

鉄は棒砂糖の目方の表章たる資格を以って、この両物体に共通の現物性質なる重さを代表するのであるが、上衣はリンネルの価値表章たる資格を以って、この両物体の超自然的性質たる価値、即ち純粋に社会的のものを代表するのである。

資本論第一巻第1篇第一章第三節一(3)等価形態

使用価値の価値概念は極めて抽象的であって、「超自然的性質たる価値」と言える。

等価形態である上衣の価値は使用価値として、リンネルの価値を相対的にではあるが、社会的に認められる価値として言い表している。

等価形態なるものは、上衣の如き商品体がその儘の姿で価値を言い現しているということ、換言すれば本来的な価値形態を具備しているということを本領としているのである。

これは上衣商品がリンネル商品に対して等価の位置に立つ価値関係の内部に於いてのみ、言い得ることである

資本論第一巻第1篇第一章第三節一(3)等価形態

ただし、等価形態における価値は、社会的に絶対的なものではない。

上衣の抽象的な使用価値を価値基準として、上衣とリンネルという二つの物の相対的な関係においてのみ、その価値を表している。

然し物の諸性質は、他物に対するその物の関係から生ずるものではなく、寧ろ斯かる関係を通して顕証されるに過ぎぬのであるから、上衣はその等価形態、即ち直接に交換し得るという性質を、重さや保温性と同様に本来具備しているように見える。

この点に、等価形態の謎的性質が由来しているのである。

資本論第一巻第1篇第一章第三節一(3)等価形態

「直接に交換し得るという性質」で等価形態は、おそらく「労働」、具体的な「労働の量」であろう。

等価として役立つ商品の現物体は、常に抽象的人間労働の体化たるものであって、それは一定の有用な具体的な労働の産物たることを常とする。

斯くして、この具体的人間労働は、抽象的の人間労働を言い現したものとなるのである。

資本論第一巻第1篇第一章第三節一(3)等価形態

そしてそれは、上衣とリンネル、棒砂糖と鉄のような内部的な関係を超えて、すべての物の価値(使用価値)を社会的に代表することができる等価形態と言えるだろう。

ただ、マルクスは、次のように「貨幣」という「皮肉」を述べている。

これでは、等価形態=貨幣(金銀)では、謎でも何でもなくなってしまう。

この謎的性質は‥‥貨幣の形をとって経済学者の前に現われるに及んで、初めて彼れのブルヂォア的に粗雑な注意に上る(のである。)

資本論第一巻第1篇第一章第三節一(3)等価形態

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