イギリスの階級社会
下層の生活必需品に対する税金はすべて、最終的に中流以上の階層によって負担される。
こうした税金をかければかならず、労働者の賃金が上昇するか、労働の需要が減少するかどちらかになる。
労働の賃金が上昇する場合には、税金はかならず、中流以上の階層が最終的に負担することになる。
この種の税金のために労働の需要が減少してどのような状態になっても、労働の賃金はこの種の税金のために、その状態で決まるはずの水準よりかならず高くなる。
そして、賃金の上昇分はかならず、最終的に中流以上の階層が負担しなければならない。
国富論第五編第二章第二節第四項その2 消費財に対する税金
イギリスは歴史的に階級社会である。
地主・貴族を中心とする上流階級、実業家・専門職などの中流階級、そしていわゆる労働者階級に大別される。労働者階級もの中でも中流階級に近い上層の階級と、最下層の労働者の区別が存在する。
労働者階級の賃金が上昇すれば、農民の賃金が上昇すれば地主などの上流階級が負担し、製造業などの労働賃金が上昇すれば、雇い主である実業家などの中流階級が負担することになる。
醸造酒と蒸留酒を販売用ではなく、自家消費用に作る場合には、イギリスでは物品税がかからない。
・・・農村では中流家庭の多く、金持ちの名家のほとんどがビールを作っている。
・・・麦芽も、個人が自家用に作る場合には、徴税人の訪問や検査を受けることはない。
ただしこの場合、物品税の代わりに家族一人当たり7シリング6ペンスの税金を支払わなければならない。
・・・
ここで提案した(麦芽製造のみ税金をかける)税制変更で打撃を受けるのは、自家消費用にビールを醸造する人だけである。
だが、貧しい労働者が重税を支払っている一方、中流以上の階層が例外を認められているのは、まったく不公正だし不公平であり、税制を変更しないとしても、この例外は撤廃すべきだ。
だが、おそらく中流以上の階層の利害のためにこれまで、財政収入の増加と負担軽減を同時に達成できないはずがない税制変更が妨げられてきたのだろう。
国富論第五編第二章第二節第四項その2 消費財に対する税金
当時のイギリスでは、まだ普通選挙は行われておらず、ある程度の収入や地位のある中流以上の階層について飲み選挙権が与えられていたと予想できる。
思うに、現代の日本の場合、熱心に選挙に行くのは「高齢者階級」。
選挙権のある若者が選挙に行かないのは、ある意味では「平和」ということであろう。
しかし、「民主主義」とは「国民主権」である。
そして、「権利」と「責任」は通常、表裏一体の関係にあるものである。
すなわち、自分達は為政者(政府)を選ぶ権利がある一方で、自分達が選んだ政府に対しては責任を持たなければならないと思う。
そうすると、選挙権という権利を行使しないということは、上記のように平和で満足した生活を送る一方で、それは他人任せの平和、自分達の生活に対して「無責任」いうことでもある。
「シルバー民主主義」といわれても仕方がありません。