債務の償還
新税は、それを担保に借り入れる資金の利子を支払うことだけを目的として課されている。
利払いに必要な額を超える税収があった場合、それは通常、意図も予想もされていなかったものなので、巨額になることはめったにない。
減債基金が作られたのは通常、当初にその税で負担することを意図していた利子か年金を支払った後に資金が余ったためというより、後に金利が引き下げられたためである。
1655年にオランダで、1685年にローマ法王領でそれぞれ減債基金が作られたのはそのためであった。
したがって、減債基金は通常、債務の償還には不十分である。
国富論第五編第三章 政府債務
国が巨額になった債務を返済しようとして、新税を創設したり既存の税に対して増税を課したりしても、通常は巨額になった債務の利子を支払うことで精一杯だったようだ。
しかし、これはあくまで、社会が発展し成長している国の話であり、現状のような「ゼロ金利」の成熟した社会では当てはまらない。
ということは、巨額の債務を返済するためには増税に頼ることなく、既存の税制を維持した状態で税収を増加させることが必要となる。
そのためには、社会全体が生産力を高め、民間の企業及び個人の所得を増やすことによって、税収を確保することだ。
企業と個人の所得は裏表である。
個人の所得が労働賃金は、企業にとっては人件費(労務費)という支出である。
しかし、労働に対する支出は単なる消費ではなく、資本の回収が可能な「投資」である。