作曲技法:インヴェンション「発見」

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作曲技法:インヴェンション「発見」

音楽之友社のインベンションとシンフォニアの前書きにこうある

《インベンション》は特定の音学形式と言う訳ではなく、その名が示すように、楽想を思いついてそれを展開する技術の一例である。これは大作曲家の手になる唯一の作曲教程だといっていい。

「思いつき」というところが「発見」な訳ですね。あるメロディ(テーマ)を思いついたら、そのテーマをこうやって展開して一つの曲を作り上げるんですよ〜、という作曲の技術を事例をもって教えた「教科書」ということだろう。

大作曲家の手になる通奏低音や対位法やフーガの教科書は確かに存在するが・・・中略・・・一層高次な意味での作曲技法というべきもの、つまり単なる技術を超えて芸術へと導くものとなると、大作曲家たちは彼らの作品そのものによってしか教えてくれなかった。19世紀に書かれた教科書は、技術作品の基礎にある法則性を体系的に示す試みとして、ほとんど例外なく不完全なものである。・・・中略・・・それゆえバッハがインヴェンションにおいて・・・中略・・・遠く未来を指し示し、のちの時代の大家たちの音楽に対する我々の理解を助けてくれるような作品を残したのは、まことに幸運なことだとみなさなければならない。

バッハさん、ありがとう!

この作品の最終稿が提供する材料のほかに、その多くの曲について初期の異形を知ることによって、我々はここの場合に行われたのちの変更の様々な理由や、さらには作曲過程の時間的前後関係を探るための材料を手にすることができる。

バッハさんも、現代の教科書と相変わらず、初稿から最終稿まで何度か手直ししてるんですね。生徒によりわかりやすく、より高度なお技術を習得してもらうためには、いわゆる改訂第○版は必要なことです。

ただ、その記録が散逸し、正確な記録として残っていないせいか、息子さんやお弟子さん、果ては後世の研究者によって改訂されているようで・・・・それで「原典版」なるのものが存在するということでしょう

ところで、上記の作曲技法として、「通奏低音」「対位法」「フーガ」というものは何か

バッハの曲における「通奏低音」(つうそうていおん、またはバッソ・コンティヌオ)は、バロック音楽の特徴的な要素の一つです。通奏低音とは、楽曲全体の和声を支える役割を果たす連続的な低音部分のことです。この低音パートは通常、チェロやヴィオローネなどの低音楽器によって演奏され、上に和音を重ねる形でチェンバロやオルガンなどの鍵盤楽器が即興的に和音を演奏します。

通奏低音

バッハの通奏低音は、楽譜に記載された低音線(バス・ライン)をもとに、演奏者が即興で和音を付ける形で演奏されます。演奏者は、低音線に書かれた数字(数字付き低音)を手がかりに、適切な和音を即興で組み立てます。通奏低音は、バロック音楽の基礎を成し、メロディや他のパートと密接に絡み合いながら曲全体の構造を支えます。

数字付き低音とは?

数字付き低音(フィギュアード・ベース、Figured Bass)は、バロック音楽において、特に通奏低音を演奏する際に使われる記譜法の一つです。この記譜法では、楽譜に記載された低音線(バス・ライン)の上または下に数字が書かれており、その数字がどの和音を演奏すべきかを示します。

数字付き低音の仕組み

  • 基本構造: 通奏低音では、低音楽器(例えばチェロやファゴット)が楽譜に書かれた低音線を演奏し、その上に鍵盤楽器(オルガンやチェンバロ)が和音を即興でつけます。この和音を形成するためのガイドとして、数字付き低音が使用されます。
  • 数字の意味: 数字は、低音音符に対して上に積み重ねるべき音程を示しています。例えば、低音の音符の上に「6」と書かれていれば、その音符に対して6度上の音を含む和音を演奏します。一般的な数字とその意味は以下の通りです:
    • なし: 5度と3度を含む、基本的な三和音を弾く(例: ドの上にミとソを弾く)。
    • 6: 3度と6度を含む和音(例: ドの上にミとラを弾く)。
    • 7: 7度を含む和音、通常は属七の和音(例: ドの上にミ、ソ、シ♭を弾く)。
    • 4 2: 4度と2度の音を含む和音。

演奏者の役割

  • 演奏者は、数字付き低音を読み取り、それに基づいて即興で和音を構築します。これにより、演奏者の音楽的判断や解釈が反映された演奏が可能になります。

もし低音線に「G」の音があり、その下に「6」と書かれていたら、演奏者は「G」の音を基準に6度上の「E」を弾き、通常はその3度上の「B」も加えて和音を作ります。この場合、G音に対してEとBが加わることで、Eマイナーの和音(G, B, E)が形成されます。

数字付き低音は、バロック時代の即興演奏技術の重要な要素であり、演奏者に大きな自由を与えつつも、和音構造に関する明確な指針を提供しています。

バッハのカンタータや協奏曲など、様々な作品で通奏低音が使用され、彼の音楽の豊かな和声とリズム感を支える重要な要素となっています。

コード(和声)の指示は、元々は「通奏低音」だったということですか

これは今でも、コードを指定するときに、三度、五度以外の音を付加するときに、6thと7thとかつけますよね

ビートルズが初期の楽曲について、曲の終わりに「6th」をつけた和音を使っていたのを、自分たちで「ありきたり」とコメントしていたのを思い出しました。

しかし、通奏低音の指示だと「6」が付くと、5度の音程を外してマイナーコードになるというのは意外です。ハ長調で言えば「ドミソ」が「ドミラ」になる・・・・確かにマイナーコードになりますが・・・・。もうちょと気の利いた指定方法はなかったんでしょうか?

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