情操教育としてのピアノレッスン

Created with Sketch.

情操教育としてのピアノレッスン

僕は、ピアノの先生、とくに子供たちにピアノ教える先生は「ピアノが好き」さらに言えば「音楽が好き」だから教えているのだ思っている(思いたい)。

ピアノの演奏技術を学ぶために「プロの演奏」(CD、演奏会)の真似する方がいいとか悪いとか、そういうことは関係なく「ピアノが好き」「音楽が好き」であって欲しい。

というのは、戦後から我が国では、音楽教育は「情操教育」としておこなっているからである。

コトバンク(情操教育)

第6節 音楽

第1 目 標

 表現及び鑑賞の活動を通して,音楽的な見方・考え方を働かせ,生活や社会の中の音や音楽と豊かに関わる資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

(1) 曲想と音楽の構造などとの関わりについて理解するとともに,表したい音楽表現をするために必要な技能を身に付けるようにする。

(2) 音楽表現を工夫することや,音楽を味わって聴くことができるようにする。

(3) 音楽活動の楽しさを体験することを通して,音楽を愛好する心情と音楽に対する感性を育むとともに,音楽に親しむ態度を養い,豊かな情操を培う。平成二十九年 「小学校学習指導要領」より

音楽教育は情操教育である,という原則は今も昔も少しも変わっていない。しかし,その意味の取り方は従来必ずしも正しい方向にあったとはいえない。音楽教育が情操教育であるという意味は,目標の一に掲げたように,音楽美の理解・感得によって高い美的情操と豊かな人間性を養うことである。昭和22(1947)学習指導要領 音楽科編(試案) より

音楽教室においてピアノのレッスンをする目的は、最終的にはいや、本来的に「音楽としての表現力」を身につけることであろう。打鍵、運指といった演奏技術はそのための手段に過ぎないと思う。

そして、ピアノのレッスンを通じて、音楽(音を楽しむ)表現することを教えることによって、いわゆる「情操教育」たる目的に資することになるのではないだろうか。

ただ、「情操教育」という観点からすれば、ピアノにかぎらず楽器、声楽など音楽(もちろんクラシック音楽にかぎらない)すべてにおいて、まずは、ライブでも演奏会でもCDでもいいので、何からかの「音」を聴いて、それが美しい・楽しい・面白いなどという「プラスの感情」を育むことだと思う。

なぜなら、僕の子供の頃を思い出すと「音楽を楽しむ」ということおいて、「演奏すること」が楽しいと思う感情と、「聴いて」楽しいと思う感情とは、同じ「プラスの感情」でははあるものの、その感情の所以するところが異なるように思えるからである。

これは、経験上とはいえ少々穿った見方かもしれないが、子供が「演奏して楽しい」と思う感情をもつ所以は、多たとえば「親が喜ぶ」「周りからすごい」と言われるといったような「音楽の美しさ」とは関係のない、ある種の「達成感」「満足感」「優越感」といったものではないだろうか?

子供がコンクールで良い成績をとって親や先生がなど周りが喜ぶが如き、または、コンクールで良い成績をとるために親が熱心にレッスンに通わせるが如きである。

もちろん、子供の教育にとって「達成感」「満足感」という気持ちを育むことは大切だろう。

しかし、上記の「情操教育」としての「音楽教育」の目的とは異なると思うし、さらに言わせてもらえば「優越感」は、他人との比較から得られる感情であることを思うと、情操教育としてはマイナスの効果を生むのかもしれないと憂慮せざるを得ないのである。


そうであれば、今回のテーマであるピアノのレッスンと音楽鑑賞に戻って、「知恵袋」で拾った回答の一つに具体的な共感を得ることができたのでその一文を掲載する。ここでいう「ピアノの上達」とは、上記の情操教育である音楽教育としての「人間の成長」と理解している。

(A氏)「(新曲に取り組む時は、まず)聴いてみてイメージをつかむ→自力で楽譜を読んで曲を仕上げる→仕上がってから他の人の演奏を聴いてみる ……という流れが、ピアノの上達のためには良いのでは?と思います。」

(B氏)

「私が今まで師事した先生方は全員口を揃えて 沢山の人の演奏を聴きなさい とおっしゃいます。 なので私は楽譜から学び、多くの演奏を聞いて耳で学び、そしてそこに自分の解釈を加えることによって一曲一曲と向かい合ってきました。

 音源を聴く、というのは確かにマイナスな面もあります。 他の方々のおっしゃる通り、どうしても音源を聴くことでイメージが偏ってしまうことや、変な先入観を持ってしまうこともあります。 ですが、プラスな面も勿論あります。むしろ、私の先生方はプラス面の方が多いと判断なさったから私に聴きなさいとおっしゃったのだと思います。

 例えば、常に和音が積み重なった曲の場合、ただ楽譜を読むだけでは到底暗譜なんて出来ません。 そこで大事になるのが和声感です。 慣れた曲から音が一つ抜けると少し違和感を感じますよね? ですが、練習段階でそこまで聞き分ける余裕も無く、楽譜の読み違えや覚え間違いである筈の音を弾かないなんてこともあると思います。 そこで、音源を何度か聴き、曲の和声をしっかり捉えることが出来れば、自分の練習に生かすことが出来ると思います。

 また、イメージが偏るとか先入観が生まれるなどと前述致しましたが、私は音源を聴き漁るうちに目標とする演奏が見つかれば儲け物だと思っています。 目標とイメージや先入観などは別だと思っておりますので。 人間、目標やゴールがあれば頑張れる生き物ですから、きっとその目標演奏 に向けてがむしゃらに練習すると思います。 でも、絶対にその目標演奏と全く同じにはなりません。弾いてる人が違いますから。それがその人の個性になるかもしれないし、個性として捉えられなかったとしてもその人の経験にはプラスになります。」

Yahoo知恵袋より

#2へ続く

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です