オルタナティブ・ロック
オルタナティブロック(Alternative Rock)は、1980年代から1990年代にかけて主にアンダーグラウンドの音楽シーンで発展したロックのサブジャンルです。以下にオルタナティブロックの特徴、歴史、代表的なバンドやアーティストについて詳述します。
オルタナティヴ(Alternative)とは、「もうひとつの選択、代わりとなる、代替手段」という意味の英語の形容詞。オルタナ・ロックは、大手レコード会社主導の商業主義的な産業ロックやポピュラー音楽とは一線を画し、アンダーグラウンドの精神を持つロックのジャンルである。イギリス、アメリカだけでなく、世界の多くの国に存在する。
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https://ja.wikipedia.org/wiki/オルタナティヴ・ロック
特徴
音楽的多様性
オルタナティブロックは非常に広範な音楽スタイルを含んでおり、パンクロック、ポストパンク、ニューウェーブ、グランジ、インディーロック、ゴシックロックなどの要素を取り入れています。
非商業的アプローチ
オルタナティブロックは、主流の商業的な音楽からの逸脱を特徴とし、より実験的で独自の音楽スタイルを追求します。このジャンルのバンドやアーティストは、しばしば独立系レーベルから音楽をリリースします。
リリックのテーマ
歌詞はしばしば個人的で内省的なテーマを扱い、社会的、政治的な問題を反映することもあります。自己表現や反抗、疎外感などがよくテーマとなります。
DIY精神
パンクロックの影響を受けたDIY(Do It Yourself)精神が根強く、バンドやアーティストは自主制作や独自のプロモーション手法を採用することが多いです。
1960年代
ベルベット・アンダーグラウンド
ベルベット・アンダーグラウンドは、オルタナティブロックの先駆者とされています。彼らは1960年代後半に活動し、実験的な音楽スタイルや挑発的な歌詞で後の多くのオルタナティブバンドに大きな影響を与えました。特に、アンディ・ウォーホルのプロデュースで知られ、アートと音楽の融合を図った彼らのアプローチは、パンクロックやポストパンク、さらにはオルタナティブロックの発展に寄与しました。
ベルベット・アンダーグラウンドと1960年代のメインストリーム、ビートルズやローリング・ストーンズとの関係については、以下のような側面があります。
対比と影響
- 音楽スタイルの対比:
- ビートルズ: ビートルズは初期のポップロックからサイケデリックロックやプログレッシブロックへと音楽性を進化させました。彼らの音楽はメロディアスで、ポップな要素が強く、主流的な音楽市場に大きな影響を与えました。
- ローリング・ストーンズ: ローリング・ストーンズはロックンロールやブルースを基盤にしたエネルギッシュで荒々しい音楽スタイルで知られています。彼らの音楽はリズム&ブルースやハードロックの要素を取り入れ、反体制的なイメージとともにロックのアイコンとして確立しました。
- ベルベット・アンダーグラウンドの革新性:
- ベルベット・アンダーグラウンドは、ビートルズやストーンズとは異なるアプローチを取りました。彼らの音楽は実験的であり、ノイズやドローン、アヴァンギャルドな要素を取り入れていました。また、歌詞は社会的なテーマや挑発的な内容を扱い、当時のポップな音楽シーンとは一線を画していました。
影響と後継者
- 影響力の相違:
- ビートルズやストーンズは商業的に大成功を収め、ロックのメインストリームを牽引しました。一方で、ベルベット・アンダーグラウンドは商業的には成功しなかったものの、アンダーグラウンドシーンや実験的な音楽において大きな影響を持ちました。
- ベルベット・アンダーグラウンドの音楽的実験性や反体制的なアプローチは、後のパンクロックやオルタナティブロックのアーティストに多大な影響を与え、その革新性は高く評価されています。
時代と文化的背景
- 1960年代はカウンターカルチャーや社会的革新の時代であり、それぞれのバンドがその時代精神に応じて音楽を形成し、音楽シーンにおける位置づけが異なっています。
このように、ベルベット・アンダーグラウンドはビートルズやローリング・ストーンズとは異なる音楽的アプローチを取り、特に後のオルタナティブロックの発展に大きな影響を与えた先駆的な存在として評価されています。
1970年代
1970年代のオルタナティブロックは、音楽シーンにおいて重要な転換期を迎えました。この時代には、前衛的な音楽スタイルや反体制的なアプローチを取るバンドが台頭し、後のオルタナティブロックやインディーロックの基盤を築くこととなりました。以下に、1970年代のオルタナティブロックの特徴や代表的なバンド、影響を与えた要因について詳しく説明します。
特徴
- 実験的な音楽スタイル:
- プログレッシブロック: バンドはより複雑で技巧的な音楽スタイルを追求しました。例えば、King CrimsonやYesのようなバンドが代表的です。彼らは長尺の楽曲や異なる音楽ジャンルの要素を組み合わせ、前衛的な音楽スタイルを築きました。
- アートロック: ジェネシスやピンク・フロイドなどが代表的なアートロックのバンドでした。彼らはコンセプトアルバムや舞台演出を含む、音楽的な実験性と視覚的なアプローチを組み合わせました。
- パンクロックの前触れ: パンクロックの影響を受けた初期のバンドも登場しました。例えば、Patti SmithやTelevisionなどが挙げられます。彼らはエネルギッシュでロウファイな音楽スタイルを展開し、後にパンクムーブメントへと発展していきます。
代表的なバンドとアーティスト
- King Crimson: プログレッシブロックの先駆者であり、複雑で独創的な楽曲構成で知られています。
- Yes: 実験的な音楽スタイルと進んだ楽曲構造で注目を集めました。
- Genesis: ピーター・ガブリエル時代からフィル・コリンズ時代にかけて、プログレッシブロックやアートロックの要素を取り入れたバンドとして成長しました。
- Patti Smith: パンクロックの先駆的存在であり、詩的な歌詞とパワフルなヴォーカルで知られます。
- Television: ニューヨークのアンダーグラウンドシーンで活動し、複雑なギターワークと独特のリズム感が特徴です。
プログレッシブロックとアートロック
ただし、プログレッシブロックやアートロックはオルタナティブロックとは異なるジャンルと見なされることが多いです。これらのジャンルは、それぞれ独自の音楽的特徴や歴史的背景を持っています。
- プログレッシブロック:
- 複雑で技巧的な楽曲構成や演奏技術を特徴とします。
- 音楽的にはジャズやクラシックの要素を取り入れたり、長尺の楽曲やコンセプトアルバムを制作することが一般的です。
- 代表的なバンドには、King Crimson、Yes、Genesisなどがあります。
- アートロック:
- 視覚芸術や文学からインスピレーションを得たアート性の高い音楽を指します。
- コンセプチュアルなアルバムや劇的な舞台演出を行うことがあります。
- 代表的なアーティストには、ピンク・フロイド、デヴィッド・ボウイ、ロキシー・ミュージックなどがあります。
オルタナティブロックとの関係
- 音楽の進化: 1970年代のオルタナティブロックは、音楽の実験性と革新性を追求し、後のロックやオルタナティブシーンに多大な影響を与えました。特に、プログレッシブロックやアートロックの要素は、後のインディーロックやオルタナティブロックの発展において重要な基盤となりました。
- カウンターカルチャーへの貢献: これらのバンドとアーティストは、社会的な視点や反体制的なスタンスを音楽を通じて表現し、カウンターカルチャーやアンダーグラウンドシーンの形成に貢献しました。
1980年代
本格的なオルタナティブロックシーンは1980年代初頭に始まります。この時期、ポストパンクやニューウェーブのバンドがオルタナティブシーンを形成しました。R.E.M.、The Smiths、Sonic Youthなどのバンドがこのジャンルの初期の代表格です。
1978年、イギリスでは前年のロンドン・パンク・ムーブメントと入れ替わるようにニュー・ウェイヴが勃興した。いっぽうで、ポストパンクの先鋭的なグループとしては、パブリック・イメージ・リミテッド(PIL)、ポップ・グループ、キャバレー・ヴォルテールらの名前が挙げられる。彼らはパンクが開けた風穴をさらに広げ、より自由で実験的な音楽を演奏した。
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アメリカでは、各地の大学で学生が自主運営していたカレッジ・ラジオ局が当時の音楽界の主流であった産業ロック[注 2]、ポップやヘヴィメタルなどを「収益性を第一とし、産業的・芸能的でアートとしての進歩性に欠け、聴衆におもねったもの」と批判し、自らが支持する音楽を「主流でない音楽、真剣な音楽」と定義して、自分たちの応援する地元、および全米やイギリスのインディーズ・アーテイストの曲をオンエアした。
全米の大学ラジオごとのチャートをあわせた「カレッジ・チャート」では、産業ロックや商業的ポップス主体のビルボード・チャートとは異なるオルタナティヴ(もう一つの選択)なバンドやソロ・アーティストが名を連ねていた。R.E.M.やU2は、カレッジ・ラジオが応援し続けたバンドとして特に有名である
1980年代半ばまでに、カナダ、アメリカの都市部にはローカルなカレッジ/オルタナ・シーンが成立し、地域のレコードリリースやラジオ放送を利用した音楽活動が行われ、音楽的な多様性が担保されていた。
1980年代に登場したR.E.M.やソニック・ユースといったオルタナティヴ・ロック勃興の旗手となったバンド群は、その人気により1990年代に入ってメジャーシーンに参加することになる。1980年代ヘヴィメタル・ロックとは違った抽象性・アート性は、音楽雑誌『ローリング・ストーン』や『NME』などをはじめ、多くの音楽メディアで評価された。サウンド的には反産業ロック、オルタナティヴ志向だった。
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1990年代
1990年代初頭、オルタナティブロックはグランジの台頭とともに大きな商業的成功を収めました。特にNirvanaの「Nevermind」やPearl Jamの「Ten」などのアルバムが広く支持され、オルタナティブロックは主流音楽シーンに大きな影響を与えました。
1990年代初頭のアメリカでは、ニルヴァーナやダイナソーJr.、パール・ジャム、サウンドガーデンなどがライブハウスやカレッジ・チャートなどを中心に、人気を獲得していった。彼らはグランジ・ロックと呼ばれた。すでに1970年代末にはオルタナティヴ・ロックという呼称は存在していたが、ジャンル名がアメリカの音楽ジャーナリズムで拡大していったのは、この時期である。グランジは、過去の全米チャート上位を独占した既存の1980年代的な産業ロック、ハードロック、ヘヴィメタル、ポップ・ロックなどとは違うロックのジャンルとして浸透していった。
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2000年代以降
2000年代に入っても、オルタナティブロックは進化し続け、多様な音楽スタイルを取り入れながら新しいバンドやアーティストが登場しました。Radiohead、Arcade Fire、The Strokesなどが2000年代の代表的なバンドです。
代表的なバンドとアーティスト
- Nirvana: グランジムーブメントを代表するバンドで、「Smells Like Teen Spirit」はオルタナティブロックの象徴的な曲です。
- R.E.M.: 1980年代にオルタナティブロックの基盤を築いたバンドで、「Losing My Religion」などのヒット曲があります。
- The Smiths: イギリスのオルタナティブロックバンドで、モリッシーの独特なボーカルとジョニー・マーのギターワークが特徴です。
- Radiohead: 1990年代から2000年代にかけて、実験的で先進的な音楽を追求し続けるバンド。「OK Computer」や「Kid A」などのアルバムが有名です。
- Sonic Youth: ノイズロックやアヴァンギャルドな要素を取り入れたバンドで、オルタナティブロックの重要な存在です。
- Pearl Jam: グランジバンドの一つで、力強いボーカルとハードなサウンドが特徴。「Alive」や「Jeremy」などのヒット曲があります。
- The Cure: ゴシックロックやポストパンクの要素を取り入れたバンドで、メランコリックなサウンドが特徴です。
オルタナティブロックの包括性
オルタナティブロックという用語は、主流の商業的ロックとは異なるアプローチを取る広範な音楽スタイルを指すため、パンクロックやポストパンクもこのカテゴリーに含まれることがあります。特に、これらのジャンルが持つ実験的、反体制的、独立した精神は、オルタナティブロックの核心となる特徴と一致します。
まとめ
- パンクロック: 1970年代後半に登場し、反体制的でDIY精神を持つ音楽ジャンル。オルタナティブロックの基盤を築いた。
- ポストパンク: パンクロックの後継ジャンルで、より実験的で内省的な音楽を追求。オルタナティブロックの一部として認識される。
- オルタナティブロック: 商業的なメインストリームのロックとは異なるアプローチを取る広範な音楽スタイルを包括する用語。パンクロックやポストパンクもこのジャンルに含まれることがある。
したがって、パンクロックやポストパンクは、広義のオルタナティブロックの一部と見なされることが多く、これらのジャンルがオルタナティブロックの発展に大きく寄与していることは明らかです。
オルタナティブロックは、音楽業界における多様性と独立性の重要性を強調し、主流音楽シーンに対する対抗文化としての役割を果たしました。現在でも、多くの新しいバンドやアーティストがオルタナティブロックの影響を受けており、ジャンルの進化を続けています。また、音楽の商業化に対する反発やDIY精神の維持など、オルタナティブロックの理念は今日の音楽シーンにも引き継がれています。