アメリカ植民地の経済合理性

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アメリカ植民地の経済合理性

18世紀後半、北アメリカの東海岸はほぼ大英帝国の植民地だった。

その当時、信頼できる通貨は金銀通貨であり、金銀と交換できる兌換紙幣はその国の金銀の保有量でその信頼度決まっていた。

なので、紙幣を多く発行することは、金銀の取り付け騒ぎがったときにその発券銀行に交換できるだけの金銀が保管してないと、銀行は破綻し、発行された紙幣は紙屑となる。

それにもかかわらず、アメリカ植民では金銀通貨ではなく大量の紙幣が流通していたようだ。

アメリカ植民地の居住者は金貨も銀貨も持っていないといわれている。

植民地内の商業には紙幣が使われているし、金銀をときおり入手しても、イギリスから購入する商品の代金として、すべてイギリスに送っているからだという。

国富論第五編第三章 政府債務

そして、アメリカ植民地の住民は金銀がないから税金が払えないと言い張るところがおもしろい。

税金は住民が払うものだから、金銀を保有する紙幣の発券銀行には税制上請求できないということだろうか。

税金の支払いのためにわざわざ金銀と交換しようとする住民がいるわけがない。

そして、金銀をもっていないのだから、税金を支払うことができないとも主張されている。

アメリカ植民地の金銀はすべて、イギリスが得ている。

金銀をもたないのだから、税金を金銀で徴収することがどうしてできるかというわけだ。

国富論第五編第三章 政府債務

アメリカで流通する紙幣は、兌換紙幣とはいっても兌換のための条件がついたいわゆる「手形」に近いものだったようだ。

そういう兌換に不利な証券で税金を支払われても、イギリス本国は困るということだろう。

経済合理性については、アメリカ植民地の方がイギリス本国より一枚上手だったようだ。

とにかく社会の発展、資本の蓄積のスピードが速いものだから、いちいち金銀の兌換にこだわる余裕はなかったのだろう。

あくまで、土地の生産物の増加が急速に進む、植民地内での取引である。

余った生産物のうち金銀の購入に充てる部分をできるかぎり少なくし、仕事に使う設備や機器、衣料の原料、各種の家具、入植地の建設と拡大に必要な鉄製品の購入にあてる方が好都合であり、紙幣には確かにかなり不利な点があるが、これがあれば金銀を使う経費を節減できる。

国富論第五編第三章 政府債務

金銀通貨をいちいち介さないで、直接紙幣を実際の財貨と交換する方が、資本の利益を確保し、その蓄積が進むのは確かだろう。

遊休資本にするのではなく、生産的に使われる資本にする方が好都合なのだ。

・・・

紙幣が余っていれば、金銀は植民地内の取引には使われなくなる。

これは、スコットランドで国内取引の大部分に金銀が使われなくなったのと同じ理由によるものである。

どちらの場合にも、金銀が使われなくなったのは貧困のためではない。

事業意欲と起業意欲が強く、入手できる資本をすべて生産的な資本として活用したいと望んでいるからである。

国富論第五編第三章 政府債務

金銀通貨には真の意味での「使用価値」というものがない。

つまり、その形態では利益を生むことはない「遊休資本」だった。

金銀通貨も貸し出せば、利子が取れるので利益を生むのではと思わないこともないが、それは紙幣でも同じことである。

いくつかの植民地政府、とくにペンシルベニア植民地政府は、居住者に紙幣を貸し出し、利子をとって財政収入を得ている。

国富論第五編第三章 政府債務

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