ホームズのストラディヴァリウス
金貨や銀貨は、流通するにつれ摩耗してその貴金属の含有量が減少する。
しかしアダム・スミスの時代は本位制であるから、金貨や銀貨という通貨の方が紙幣や手形よりも信頼性は高買ったのだろう。
本位制では、紙幣の発行量が増えると銀行の破綻を招く恐れがあるため、信用のない銀行家でも乱発できるような小額紙幣(少額手形)は廃止されたのかもしれない。
しかし、本位制自体は紙幣の発行量を制限し、旺盛な商業取引の需要に応えられなくなるというデメリットがある。
19世紀末、シャーロック・ホームズの時代のイギリスでは、10ポンド紙幣、ギニー金貨(1ポンド)の両方が流通していたようだ。
ホームズが所有するヴァイオリン、ストラディヴァリウスは500ギニー(500ポンド=500万円)の価値があると言っていた。
ちなみに、ホームズはそのヴァイオリンは古物商から55シリング(55,000円)で手に入れたと自慢していたらしいが、どちらかの目が節穴なのだろう。
私達は一緒に楽しい昼食をとった。その間ホームズはバイオリンの話以外はしなかった。彼は、物凄く嬉しそうに、どうやって少なくとも500ギニーの値打ちのあるストラディバリウスをトテナムコートロードのユダヤ人古物商から55シリングで買ったか、話していた。
シャーロック・ホームズの最後の挨拶
20世紀前半戦間期の経済不況の時代には、ほぼ全ての大国が本位制から離脱した。
これによって金銀通貨の時代は終わり、ほぼ全ての取引が紙幣または手形による信用取引となる。
つまり紙幣の発行量を注意深く管理すれば、銀行の発行量の破綻というような危険は回避できるということである。