資本の利益に対する税金
資本から生じる収入、つまり利益は、自然に二つの部分に分かれる。
利子を支払い、資本の所有者に帰属する部分と、利子の支払いに必要な額を超える余剰部分である。
利益のうちこの余剰部分は明らかに、直接の課税対象にならない。
この部分は資本を使うリスクと手間に対する報酬であり、しかもほとんどの場合、ごく適度な報酬にすぎない。
農業資本として土地の耕作に使う場合、土地生産物のうち自分取り分とする部分かその対価の比率を高めることによってしか、利益率を引き上げられない。
それには地代を減らすしかなく、税金は最終的に地主が負担する。
商業か製造業の資本として使う場合には、商品価格を引き上げることによってしか、利益率を引き上げられない。
この場合、税金は最終的に、商品の消費者が負担する。
国富論第五編第二章第二節第二項 利益、つまり資本から生じる収入に対する税金
税金の負担は、その収入の源泉によって、土地(地主)、資本の利益(事業者)、労働(消費者)に分けられる。
最低限の利益率を超える余剰利益は、事業者は一時的に得ることはできても、市場の競争原理によって事業者以外の地主また労働に充てられることになる。
建物を賃貸し家賃収入を得る不動産賃貸業では、余剰利益は「敷地地代」として地主の収入となるので、家賃収入の直接の課税対象とはならないため、地主が負担する。
また、農業経営では地主、商業では商品の消費者、製造業ではやはりその製品を最終的に消費する消費者が負担する。
ここでいう余剰部分とは余剰利益のうち、地代と労働に充てられた残りの部分であって、資本を使って事業をおこう資本家の手間とリスクに対す報酬である。
事業者には最低限の資本の利益が直接の課税対象であり余剰部分は課税体調とはならない。
資本の利益に対する税金の負担者
しかし、商業のある業種に使われる資本の利益に対する税金が、最終的に商人の負担になることはあり得ない(商人は通常の場合、妥当な利益を得ているはずであり、競争が自由であれば、妥当な水準を超える利益を得られることはまずない)。
国富論第五編第二章第二節第二項 特定業種の利益に対する税金
事業者の利益に対し増税になった場合は、支払者は直接の課税対象となる事業者である。
しかし、事業者の資本の利益は市場の競争原理によって事業を継続するための最低限の利益率であるから、事業者が直接負担した場合、事業を継続できない。
よって事業者は、税金の支払いのために資本の利益以外の地代または労働にその負担を添加しなければならない。
不動産賃貸業では、敷地地代を増税分相当を差し引くことによって地主に転嫁するか、もしくは家屋賃料を増額し労働(消費者)に転嫁するしかない。
もっとも、不動産賃貸業の市場の競争原理おいて、余剰利益は敷地地代に充てられることから、増税によって資本の利益が減少する場合はその減少分は敷地地代から差し引くべきである。
農業経営者も同様に土地生産物から地代に充てる部分にその負担を転嫁せざるを得ない。
商業や製造業では最終的に余剰利益は消費者が負担していることから、商品の値上げによって増税分を商品に転嫁し「労働」が負担する。