土地生産物にかかる税金
土地生産物に対する税金は、実際には地代に対する税金である。
直接には農業経営者が納税する場合でも、最終的には地主が負担する。
国富論第五編第二章第二節第一項その2 地代ではなく土地生産物に比例する税金
農業経営者は、生産物のある部分を税金として支払わなければならない場合、税金部分の価値が平均して年にどの程度になるかをできるかぎり正確に計算し、その分を差し引いて、地主に支払うことに同意する地代を算出する。
10分の1税などのこの種の土地税は、完全に公平だとみえるが、実際にはきわめて不公平な税金である。
生産物に対する比率が一定でも、状況が違えば、地代に対する比率が大きく違うからだ。
土地がきわめて肥沃で大量の生産物を生産できれば、農業経営者が生産物の半分だけで耕作に使った資本を回収し、地域の農業資本にとって通常の利益を確保できる場合がある。
国富論第五編第二章第二節第一項その2 地代ではなく土地生産物に比例する税金
土地生産物に対する税金の源泉
農業経営者とは、地主から土地を賃借して農産物を生産し、それを市場で売却して収入を得る「事業者」であり「資本家」である。
また、スミスは、「主権者または国が保有する財源は、資本か土地のどちらかである。」「民間人の収入は、・・・土地の地代、資本の利益、労働の賃金である。」という。
そうすると、土地生産物にかかる税金は、その源泉が「資本」か「土地」か、または課税標準は「土地の地代」か「資本の利益」か問題となる。
この点スミスは、「直接には農業経営者が納税する場合でも、最終的には地主が負担する。」「生産物に対する比率が一定でも、状況が違えば、地代に対する比率が大きく違う・・」という。
もし、土地生産物に対する税金が農業経営者の「資本」を源泉とする「資本の利益」を課税標準とするならば、その税率を一定にするときわめて不公平になる。
スミスはその例として、教会の徴収する「10分の1税」を上げている。
つまり、ここでいう「土地生産物に対する税金」は、農業経営者の「資本」をその源泉とするものではなく、地主の所有する「土地」であると考えている。
地主の不動産事業の収益にかかる税金
地主の地代にかかる税金は、その源泉が「土地」であることから「固定資産税」に相当すると考えた。
そうすると、地主が負担するという土地生産物にかかる税金は、「地主の不動産事業の収益にかかる税金」と考えるべきであろう。
なぜなら、土地生産物の価値を課税対象とするときは、その土地が潜在的に持つ収益力に比例すると考えられるからである。
たとえば、地主が行った土地の改良によって生産性が向上し、農業経営者の収入が増加したときは、地主が土地改良に費やした経費を地代として回収しなければならない。
したがって、農業経営者の収益のうち、その土地が持つ収益力によって得られる部分は、地代として地主に支払うべきである。