地代にかかる税金
民間人の収入は、第一編第六章に示したように、最終的に三つの源泉に由来している。
土地の地代、資本の利益、労働の賃金である。
税金はすべて、最終的にはこの三つの源泉のうち一つから支払われるか、源泉とは無関係に三種類の収入のすべてから支払われる。
国富論第五篇第二章第二節 税
土地の地代
土地の地代に対する課税の方法は二つある。
第一は、ある基準にしたがって各地区の地代の評価額を定め、その後は評価額を変更しない方法である。
第二は、土地の実際の地代が変わるたびに課税額が変わり、農業が発達すれば高くなり、衰退すれば低くなるようにする方法である。
国富論第五篇第二章第二節第一項その一 地代に対する税金
土地の地代とは、不動産賃貸業による「不動産収入」ではなく、「固定資産税」と考えるべきかもしれない。
なぜなら、アダム・スミスは多少の違いはあっても「土地を保有していれば、かならず収益を得られるもの」と考えているようにみえる。
そもそも、土地の地代とは現代の「不動産業」という資本家による事業の一つといった概念ではなく、アダム・スミスの時代は、「地主」と「土地賃借人」という基本的な社会的関係がかならず存在しており、その地主にかかる税金のことをいっているのである。
帰属家賃
GDP(国内総生産)は、個人の居住用不動産であっても、その不動産を賃貸した場合の賃貸料を、国民の収入に含めて計上する。
とても分かりやすい説明をしてくれたサイトがあった。
GDPには生産面、分配面、支出面の三面があります。そのうち、「生産面から見たGDP」は各産業が生み出した付加価値を捉えます。
・・・もうひとつの理由は、GDPの中で計上される「帰属家賃」です。
借家に住む人は、家賃を払います。この家賃はGDPの対象です。一方、自分が所有する家(持ち家)に住む人は、ふつう、自分の家に家賃を払いませんね。ところが、GDPでは、持ち家に住む人は、自分の家に家賃を払うとみなすのです。この家賃を「帰属家賃」と言います。帰属家賃もGDPの対象です。
GDPはなぜ、このような扱いをするのでしょうか。実は、この帰属家賃により、GDPは住居形態によらなくなっています。例えば、住居が借家から持ち家に変わり、家賃を払わなくなっても、帰属家賃の支払いが生じるため、GDPが減少することはありません(簡単化のため、家賃と帰属家賃は等しいと仮定します)。逆に住居が持ち家から借家に変わり、家賃を払うようになっても、帰属家賃の支払いが無くなるため、GDPが増加することはありません。
GDP統計・・・では、持ち家に住む人は、不動産業を営む事業主とされます。
GDPのひみつ -不動産業の割合はなぜ大きい?
また、前節において
主権者または国が保有する財源は、資本か土地のどちらかである。
と言及していることから、国の財源を土地と資本に区分しており、実際に「不動産業」を事業として営む場合の不動産業者の経費を除く純収入は、土地を「資本」としてみなした場合における国民の収入として計上する方が適切に思えるからである。
すなわち、上記でいう「帰属家賃」は土地(不動産)という「土地に内在する源泉」から得られる国の財政収入と解するのが妥当ではないだろうか。
資本から生じる収入、つまり利益は、自然に二つの部分に分かれる。
利子を支払い、資本の所有者に帰属する部分と、利子の支払いに必要な額を超える余剰部分である。
国富論第五編第二章第二節第二項 利益、つまり資本から生じる収入に対する税金
国が税金として徴収する場合の不動産業の不動産収入は、その源泉が「土地」と「資本」の二つから構成されており、「土地の地代」として計上される固定資産税(土地)の部分と、「資本の利益」として計上される「賃貸料」(不動産業者の純収入)の部分に区分してよいのではなかろうか。