ピアノレッスンと音楽鑑賞
ピアノ教室の体験レッスンを始めてから、4箇所目にしてようやくお世話になる教室先生が決まった。
決定打は、極めて簡単だった。
「グレン・グールドを知っているか?」である。
おそらく、一部のクラシック音楽ファンにとっては「はあ?ピアノの先生なら当然知ってるだろう」と思うだろう。
しかし、最初の三人の先生は、どうも「知らない?」ようなのだ!
というのも、話の流れの中で「バッハといえば、グレン・グールドいいですよね・・・」なんて話題を振ってみたところ・・・・無反応・・・・。
グールドなんて「NHKクラシックTV」でもやってたし、バッハだけについても超有名なピアニストだと思っているので、(いい意味でも悪い意味でも)何らかのツッコミがあると期待してた。
例えば「初心者はグールドの真似なんてしちゃダメですよ!」とか・・・・。
もしかしたら、そんな「雑談」に付き合いたくはないという意味かとも思い、カミさん(妻)にも話してみたが、「それはおかしいんじゃないの?」とのこと。
ちなみに、カミさんはクラシックどころか「音楽」自体についてはど素人、ただ一緒に「クラシックTV」を見るようになって少々興味を持つようなってきた。
そこで、失礼とは思いつつ、思い切って体験レッスン三人目の先生に質問してみた。
「先生は、グレン・グールドご存知ですよね?」『NHKのクラシックTVとか見られますよね?」と。
結果は、クラシックTVはたまに見る「面白いですね」という反応。
しかし、グレン・グールドは「知らない」というのだ( ゚д゚)。
この際、さらに失礼承知で聴いてみた。「先生は、CDとかでプロの演奏の音楽鑑賞とかされないんですか?」
すると「私は、ピアノを教えることが専門なんで、音楽鑑賞とかCDを聞くことはあまりないんです」とのこと((((;゚Д゚)))))))
そんな雰囲気の中で始まったその後の体験レッスン、(おそらくお互いの)「苦行」はご想像にお任せする。
ピアノのレッスンでは「CD」を聞くことを薦めないのか!?
音楽教室の先生方は「音学鑑賞」をしない!?
ちょっと気になったので、ネット上で「ピアノレッスン CD聴かない」というワードで少し情報を拾ってみところ、やはり賛否両論あるようで・・・・。
以下は、おそらくプロの演奏家のブログ、大変まとまっており勉強になったので、ポイントとなるセンテンスだけ紹介する。
レッスンで賛否分かれる意見シリーズ⑨「新曲を練習開始時に、プロ音源を参考にすべき?それとも楽譜に忠実にすべき?」
アメリカではあまり聞いたことが無い話なのですが、よく日本の音楽界で「プロ音源を聴くと個性が失われる?」なんていうお話を聞きます、・・略・。
こういう話が出回った原因として、要は、右も左もわからない学生に多いのが、とりあえずプロ音源の真似を完全に行う、所謂「完コピ」を行う生徒が多いから・・略・・。
そのことに危機感を感じて「プロ音源を聴くのをやめなさい、個性が失われてしまいます」と指導される先生が多々現れたのだと思います。
その後、「プロ音源を聴くことをやめる」ということを鵜呑みにした生徒たちの演奏は、なんとも個性の無い訳のわからない(悪い意味で個性的な)演奏をすることとなりました。
・・・譜面だけで弾く生徒もいて、まったくプロ音源を聴かずに、曲の感じを掴まない生徒もいます。
実はこのタイプの生徒は、レッスンの先生にとって、とても優秀な生徒と思われることが多いです。
何故なら、先ずは先生は、譜面通りに弾かせることがレッスンでの仕事ですから、それを最初から気をつけて練習してきてくれる生徒は、先生にとってとても助かるかるのです。
両方大事、要は聴き方が大事!
色々な音源を聴いて、その演奏をどう思うかが大事です。そして、現在沢山ある音源の中でも、理想の好きな人の音源を選んで聴くことです!
もちろん、僕のような「聴き弾き」から始めた生徒への苦言もある!。
しかし、プロ音源をよく聴きすぎる生徒は、音源を聴いて、読譜を怠ってしまいイメージとマネだけで弾くので作曲家の意図とは離れ、譜面を音符を正確に弾かなくなってしまう例が多々あります。
・・・実は、これは完コピよりたちが悪いです。何故なら譜面を無視した「完ミス(完璧な間違い?!)」だからです!
体験レッスン2番目の先生に、「楽譜をよくみて、ゆっくり、ちゃんと弾きませんか?」と言われたのが身に染みる((*´∇`*)
しかし、次の体験談で少々救われた気がする。
プロだって始めた頃は間違い犯していた、いや、間違いから入ってそれに気づいたからこそ、プロの演奏家になれたのでは?とも思える。
なぜそう言い切れるのか!?なぜなら、私が楽譜が読めない小学生時代に、そうであったからです!!!・・・・・・
・・・中学生以降、ソルフェージュや楽典、音楽理論を学び考えは180度変わり改善しました。CDプロ音源が少し個性としてアレンジされていても、しっかりちゃぁんと「譜面通りに演奏されていること」を理解するようになってからは、そのまま適当に聴いて真似するだけの様な浅はかなことをやめるようになりました。
僕の場合は、ストリーミングで多くのプロが演奏するベートヴェンの「悲愴ソナタ」を聴いて(便利な時代になったものだ)、その中でも「ファジル・サイ」や「反田恭平」みたいに「自分のイメージで弾きたい」と思ったのであり、別に「完コピ」したいと思ったわけではないし、そもそもこの歳になって始めてから、この二人の素晴らしい演奏を完コピできる訳が無い!
しかし、自分が「ちゃんと」譜読みができておらず、「ちゃんと」打鍵、運指ができていないのというのはたしかだ!
そして、それこそが「独学の壁」にぶつかった原因であって、独学にこだわらず「ちゃんと」教えてもらおうと思ったきっかけでもある。
情操教育としてのピアノレッスン
僕は、ピアノの先生、とくに子供たちにピアノ教える先生は「ピアノが好き」さらに言えば「音楽が好き」だから教えているのだ思っている(思いたい)。
ピアノの演奏技術を学ぶために「プロの演奏」(CD、演奏会)の真似する方がいいとか悪いとか、そういうことは関係なく「ピアノが好き」「音楽が好き」であって欲しい。
というのは、戦後から我が国では、音楽教育は「情操教育」としておこなっているからである。
第6節 音楽
第1 目 標
表現及び鑑賞の活動を通して,音楽的な見方・考え方を働かせ,生活や社会の中の音や音楽と豊かに関わる資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 曲想と音楽の構造などとの関わりについて理解するとともに,表したい音楽表現をするために必要な技能を身に付けるようにする。
(2) 音楽表現を工夫することや,音楽を味わって聴くことができるようにする。
(3) 音楽活動の楽しさを体験することを通して,音楽を愛好する心情と音楽に対する感性を育むとともに,音楽に親しむ態度を養い,豊かな情操を培う。
平成二十九年 「小学校学習指導要領」より
音楽教育は情操教育である,という原則は今も昔も少しも変わっていない。しかし,その意味の取り方は従来必ずしも正しい方向にあったとはいえない。音楽教育が情操教育であるという意味は,目標の一に掲げたように,音楽美の理解・感得によって高い美的情操と豊かな人間性を養うことである。
昭和22(1947)学習指導要領 音楽科編(試案) より
音楽教室においてピアノのレッスンをする目的は、最終的にはいや、本来的に「音楽としての表現力」を身につけることであろう。打鍵、運指といった演奏技術はそのための手段に過ぎないと思う。
そして、ピアノのレッスンを通じて、音楽(音を楽しむ)表現することを教えることによって、いわゆる「情操教育」たる目的に資することになるのではないだろうか。
ただ、「情操教育」という観点からすれば、ピアノにかぎらず楽器、声楽など音楽(もちろんクラシック音楽にかぎらない)すべてにおいて、まずは、ライブでも演奏会でもCDでもいいので、何からかの「音」を聴いて、それが美しい・楽しい・面白いなどという「プラスの感情」を育むことだと思う。
なぜなら、僕の子供の頃を思い出すと「音楽を楽しむ」ということおいて、「演奏すること」が楽しいと思う感情と、「聴いて」楽しいと思う感情とは、同じ「プラスの感情」でははあるものの、その感情の所以するところが異なるように思えるからである。
これは、経験上とはいえ少々穿った見方かもしれないが、子供が「演奏して楽しい」と思う感情をもつ所以は、多たとえば「親が喜ぶ」「周りからすごい」と言われるといったような「音楽の美しさ」とは関係のない、ある種の「達成感」「満足感」「優越感」といったものではないだろうか?
子供がコンクールで良い成績をとって親や先生がなど周りが喜ぶが如き、または、コンクールで良い成績をとるために親が熱心にレッスンに通わせるが如きである。
もちろん、子供の教育にとって「達成感」「満足感」という気持ちを育むことは大切だろう。
しかし、上記の「情操教育」としての「音楽教育」の目的とは異なると思うし、さらに言わせてもらえば「優越感」は、他人との比較から得られる感情であることを思うと、情操教育としてはマイナスの効果を生むのかもしれないと憂慮せざるを得ないのである。
そうであれば、今回のテーマであるピアノのレッスンと音楽鑑賞に戻って、「知恵袋」で拾った回答の一つに具体的な共感を得ることができたのでその一文を掲載する。ここでいう「ピアノの上達」とは、上記の情操教育である音楽教育としての「人間の成長」と理解している。
(新曲に取り組む時は、まず)聴いてみてイメージをつかむ→自力で楽譜を読んで曲を仕上げる→仕上がってから他の人の演奏を聴いてみる ……という流れが、ピアノの上達のためには良いのでは?と思います。
Yahoo知恵袋より