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感性と理論

公立大学学生の退学処分の性格と裁判権のおよぶ範囲


昭和29年7月30日

 昭和28(オ)745
昭和28(オ)525

第三小法廷判決

上告棄却

(全員一致)

放学処分取消請求


一 公立大学の懲戒処分性質

公立大学の学長がその学生に退学を命ずる行為は、行政事件訴訟特例法第一条</にいう行政処分に当る。

二 懲戒権者の懲戒処分の妥当性

二 公立大学学生の行為に対し、懲戒処分を発動するかどうか、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶかを決定することは、この点の判断が社会観念上著しく妥当を欠くものと認められる場合を除き、原則として、懲戒権者としての学長の裁量に任されるが、懲戒処分が全く事実の基礎を欠くものであるかどうかの点は、裁判所の判断に服する。

私立大学における学生の政治的活動に対する規制の合理性


昭和49年8月19日

 昭和42(行ツ)59

第三小法廷判決

棄却

(全員一致)

身分確認請求昭和女子大学事件』


一 学生の政治活動の自由

私立大学において、その建学の精神に基づく校風と教育方針に照らし、学生が政治的目的の署名運動に参加し又は政治的活動を目的とする学外団体に加入するのを放任することは教育上好ましくないとする見地から、学則等により、学生の署名運動について事前に学校当局に届け出るべきこと及び学生の学外団体加入について学校当局の許可を受けるべきことを定めても、これをもつて直ちに学生の政治的活動の自由に対する不合理な規制ということはできない。

二 裁量権の合理性の基準

学校教育法施行規則13条2項四号により学生の退学処分を行うにあたり、当該学生に対して学校当局のとつた措置が本人に反省を促すための補導の面において欠けるところがあつたとしても、それだけで退学処分が違法となるものではなく、その点をも含めた諸般の事情を総合的に観察して、退学処分の選択が社会通念上合理性を認めることができないようなものでないかぎり、その処分は、学長の裁量権の範囲内にあるのというべきである。

三 退学処分の妥当性判断

学生の思想の穏健中正を標榜する保守的傾向の私立大学の学生が、学則に違反して、政治的活動を目的とする学外団体に無許可で加入し又は加入の申込をし、かつ、無届で政治的目的の署名運動をした事案において、これに対する学校当局の措置が、学生の責任を追及することに急で、反省を求めるために説得に努めたとはいえないものであつたとしても、他方、右学生は、学則違反についての責任の自覚歩うすく、学外団体からの離脱を求める学校当局の要求に従う意思はなく、説諭に対して終始反発したうえ、週刊誌や学外集会等において公然と学校当局の措置を非難するような行動をしたなど判示の事情があるときは、学校教育法施行規則13条3項四号により右学生に対してされた退学処分は、学長に認められた裁量権の範囲内にあるものとしてその効力を是認すべきである。

学生集会と大学の有する学問の自由および自治


昭和38年5月22日

 昭和()

大法廷判決

破棄差戻

(補足意見及び意見あり)

暴力行為等処罰ニ関スル法律違反『東大ポポロ事件』


一 憲法第23条の学問の自由は、学問的研究の自由とその研究結果の発表の自由とを含み、同条は、広くすべての国民に対してそれらの自由を保障するとともに、特に大学におけるそれらの自由および大学における教授の自由を保障することを趣旨としたものである。

二 学生の集会は、大学の許可したものであつても真に学問的な研究またはその結果の発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動に当る行為をする場合には、大学の有する特別の学問の自由と自治は享有しない。